ローカル線を守れる人は鉄道ファンしかいない

先月開業した北海道新幹線。東京から乗り換えなしで青函トンネルを超え北海道に新幹線で行けるとはだれが想像したことでしょうか。北海道はいまだ寒く、観光客の姿はまだまだ少ないけど今後GWや夏休みにどのように函館をはじめとした道南地域が盛り上がるのかが楽しみなところであります。


北海道新幹線開業のわずか2年前に道南地域からひっそりと路線が消えたことを知る人は少ないだろう。その路線の名はJR江差線である。江差線は函館のお隣である五稜郭駅から新しく新幹線の駅になった木古内を抜け、漁業が盛んな江差町の江差駅に至る全長79.9kmの路線です。そのうち五稜郭~木古内間は新幹線開業までは特急や寝台列車、貨物列車などが通る重要な幹線で電化もされていますが、木古内から江差の間は閑散としていて、当然電化はされておらず、1両の気動車が一日6往復していましたが、およそ2年前の2014年5月11日を以って木古内~江差間は廃止になってしまい78年の長き歴史に幕を下ろしました。江差線の木古内~江差間は一日の乗車密度(1kmあたりの一日平均利用者数)が末期は僅か41人ほどしかいなかったのです。この41人という数字がいかに少ないかと言いますと、国鉄時代末期に路線廃止の目安になった輸送密度は一日4000人以下。その数字の100分の1ほどしか利用者がいなかったのです。
ほかの路線の輸送密度を見てみましょう。八高線の高麗川~高崎区間の輸送密度は2888人(2014年)、只見線の被災前(2010年)の輸送密度が370人。江差線の41人という数字は廃止を免れることはできなかったのです。
現在、北海道を始めとした日本全国にある赤字ローカル線は廃止の危機にあります。今年の12月には留萌本線の留萌~増毛が廃止になることが決まってしまいました。利用者減少の理由は少子高齢化や都市部への人口流失などで地方鉄道を見つめれば日本の諸問題が次々と見えてきます
今、特に廃止の危機が高まっている路線は、災害で長期休止中の日高本線、同じく災害で休止中の福島県と新潟県にまたがる只見線、大幅な減便が伝えられた宗谷本線、花咲線、札沼線などがあります。
これらの路線に鉄道会社側が廃止を提案しても沿線自治体は当然拒否します。しかし、そのことに対して、多くの人や鉄道ファンは「普段乗らないのに残せというのはエゴだ」と合唱します。私は鉄道ファンとしてそのような考え方は非常に嫌悪感があります。本当にそれでいいのでしょうか。
鉄道が廃止になって失うもの。鉄道という交通手段がなくなってしまうと当然、人口は減り街の衰退はさらに加速してしまいます。通院・通学等に鉄道を使っていた人は不便になってしまいます。と、大人たちはこのように考えます。しかし、大人たちは鉄道がなくなることで一番失うものに気づいていません。
私が前にYoutubeで見たのですが、ある路線が廃止になるときに地元の小学生が鉄道の絵を書き、それが駅に飾られていました。その絵には「鉄道がなくなるのはさみしい」と書かれていました。それを見た瞬間、私はハッとしました。
鉄道が廃止になって一番失うものは、『鉄道のある風景』なのではないかと。朝、何気なく通る踏切、毎朝掃除を欠かさない駅長さん。颯爽と駆け抜ける列車を見て、鉄道の運転士になろうと夢見た幼き日々。普段乗らなくても鉄道は街の大切な一部なのです。その小学生の書いた「鉄道がなくなるとさみしい」これはすべての物事の中心を射抜くような言葉のような気がします。普段使わないけど鉄道を残したい理由、それは「鉄道のない風景は寂しい」。これが真理なのだと思います。
このことは僕がいすみ鉄道に遊びに行ったときに同じことを思いました。いすみ鉄道も廃止の危機にあった千葉県のローカル線ですが、一般公募で選ばれた鳥塚社長らの経営努力によって今日まで鉄路が存続しています。
いすみ鉄道の国吉駅をはじめとした各々の駅では地元の方がボランティアとして働いています。鳥塚社長の著書、「いすみ鉄道公募社長」や「ローカル線で地域を元気にする方法」には、『もちろん最初はいろいろな問題があったが、だんだんと協力してくれるようになった』と書かれています。ボランティアの方や地元の商店街の方々は、いすみ鉄道の風景を残したいからこそ活動されているのです。沿線の人はみな、黄色い列車を守りたいのです。沿線の人はみな、鉄道の風景がなくなるのが寂しいのです。
なかなか一般の人にはわかりにくいこの気持ちですが、鉄道ファンなら鉄道のある風景の情緒、魅力がわかるはずです。その美しい風景を残すには私たちが支えてあげなければならないのです。鉄道で楽しませてもらっている分、その恩は返さなくてはなりません。今年のSMAP解散騒動の中でSMAPのファンたちは解散してほしくないとSMAPのCDを大量に購入しました。そしてついに「世界に一つだけの花」がオリコン1位になりました。アイドルファンも、たとえそのアイドルが売れていなくてもCDやグッズを買いあさりなんとか支えています。
一方、鉄道ファンは鉄道に対し何をしているでしょうか?解散危機にあるSMAPやあまり売れていないアイドルに対し、ファンがお金を使いなんとか支えていくように、廃止の危機にある地方ローカル線に乗ったり沿線にお金を落とし何とか維持していくようなことをしているでしょうか?また、葬式鉄といわれる鉄道ファンたちは廃止が決まった後に集まってきます。廃止が報道される前から廃止を免れようと活動する鉄道ファンは少ないのです。
鉄道が好きなら、その大好きな鉄道を守るために奮起しないといけないと僕は思います。鉄道ファンにはローカル線を残していく義務があるのです
18きっぷを使っていくのでも構いません。その時はそのまま通過するのではなくスケジュールに余裕があるのならぜひ途中下車してみてください。そこで飲み物でも軽食でもいいので何かしら買ってください。そうするだけでも大きく変わります。地方鉄道、乗って残して乗って作ろう。マナーを守ってみんなで美しい日本のローカル線を残していきましょう


【追伸】
2016年4月に発生した熊本・大分大震災の影響により、第三セクターの南阿蘇鉄道・高森線において大規模な土砂崩れや橋脚の損傷が発見され、復旧には数十億円もの費用がかかるとの試算もあります。高森線は全長17.7kmの短い路線で沿線には阿蘇山の雄大な景色が広がる美しいローカル線です。しかし、その高森線も地震により重大な危機が訪れています。
現在、いすみ鉄道・ひたちなか海浜鉄道・由利高原鉄道・若桜鉄道の4社が同時に『南阿蘇鐵道 希望の光 復興祈念切符』を発売しています。この切符は上の4社の入場券に南阿蘇鉄道の全線の乗車券を加えた5枚1セットで価格は1000円。雑費を除いた700円が南阿蘇鉄道に寄付されます。また、個人での南阿蘇鉄道に対する募金もできます。振込先は下記を参照にしてください。鉄道ファンとして、この記事をお読みになられた方にお願い申し上げます。何としてでもこの南阿蘇鉄道を守るために少額でも構いません。募金にご協力してください。お願いします。この美しい景色を守るためにお願いします。


■義援金名 熊本地震 南鉄復旧義援金
■受付期間 平成28年4月25日(月)~
■受付方法(金融機関での振り込みのみ)
 お近くの金融機関から、指定の下記口座にお振込みください。


 ・銀 行 名:肥後銀行
 ・支 店 名:高森支店
 ・科  目:普通
 ・口座番号:1406905
 ・口座名義:ミナミアソテツドウ(カ


問い合わせ先
南阿蘇鉄道(株)総務課
電話番号 0967-62-1219